妻の様子がおかしくなったのは、暑い夏の7月のことだった。
「私のこと愛してる?」
「もちろん! 愛してるに決まってるだろ……。でも、どうしたの急に?」
「ううん、何でも無い。ちょっと気になったの。^^」
そんなメールが来た直後に、無気力になり、セックスレス になり、一度だけだけど「離婚したい」と言われた。
そして季節は冬。
妻が匿名アカウントでSNSに「新しい恋を見つけた」と投稿しているのを、遂に目の当たりにしてしまった。
妻が不倫をしているのを密かに知り、迎えたクリスマスイブ
「SNSを見たぞ! お前、不倫していたのか!!」
そんなことは言えません。
あれはこっそり盗み見た情報だからです。
完全に離婚する気満々になったのであれば、毅然とした態度で桜子に迫ることができるのですが、そうはならなかった。
情けないのか? 俺は。
そうは思わない。
初めて起きた離婚の危機。乗り切るための努力はするべきだろう。
それも最大限の努力。
そうでないと後悔する。
不倫しているという事はわかった。
そして離婚は阻止したい。
男とは別れさせたい。
さて、どうすべきか。
とにかく、突然僕の態度が変わってしまうと勘ぐられるので、これまで通り優しさを絶やさないように接した。本当にショックだったけど、なんとか冷静を保ちながら。
不倫発覚から10日ほど経ったころ、クリスマスイブを迎えた。
先月、結婚記念日をスルーしたので、クリスマスが無いくらいどうってことない。いつも通り過ごせば良いんだ。
仕事中の昼休み、桜子から携帯にメッセージが届いた。
「今夜、遅くなります。ご飯適当に食べといて」
キタ……。
息が詰まりそうな空気が続いていたので、ここ数週間、毎日顔を合わせて家で食事をしていた訳ではない。僕が会社の上司との飲んで帰ったり、妻の「今日は食べて帰る」のお知らせが来たり。夫婦揃って家で食事をしていたのは、週4〜5日だった。
特別珍しいメールではなかったが、クリスマスイブにこの内容。
不倫相手との約束があるんだ。
直感じゃなくてもそれは判る。
辛い想いが込み上げてくる。
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その夜、僕は夜の繁華街をひとりで彷徨い歩いた。「桜子は浮気相手と一緒に、ここにいるのではないか?」。そんな想いをもって、バー、ホテル街などを延々。
もしバッタリ出くわせば、それはそれで何らかの進展があるかも知れない。
時間が惜しいのと、こんな夜に独り飯が辛いのとで、クリスマスイブでにぎわう繁華街で寂しく松屋で牛丼を急いで食べた。
4時間は彷徨っただろうか。
見つかるはずもなく帰路についた。
桜子は深夜に帰宅。
「おかえり」
「ただいま」
会話はそれくらいで、お互いそれ以上は話さなかった。
後日、桜子はクリスマスイブにライブへ行っていたことがわかった。「楽しかった〜!」なんてことをmixiに書いていたからだ。
縛り付けても解決しない。
だからといって自由にすれば不倫は加速するのでは、と不安になる。
どうすべきか。
ジレンマだった。
(次回へ続く)→ 妻の携帯パスワードロック解除に成功。不倫の事実を確実にする。
第3章・不倫相手との話し合い(12)
2004年12月