妻の不倫相手は、10歳年上の職場の上司。
自分も既婚者でありながら、妻に離婚するよう仕向けてくる。一体、何が狙いなんだ? 自分は家族を捨てて、再婚したいと願っているのだろうか……。
とにかく僕は、妻との話し合いだけでは解決できないと悟った。
妻との話し合いでは進展しない、不倫相手との直接対決を決意
妻の桜子との話し合いだけでは、解決の色口が得られない。
妻を追いつめても進展せず、疲弊するばかり。
もはや、佐伯と直接話をするしかない。
平日月曜日の夜、桜子に「出掛けて来る」とだけ告げて、車で佐伯の家へ向かった。うちから約30分ほどのところだ。
夜10時30分、奴の自宅のチャイムを鳴らす。
この遅い時間にしたのは、帰宅してるだろうと予測しての配慮だ。ドアの開けたのは、奥さんでも、子供でもなく、佐伯本人だった。
「別の場所で話そう」
と、佐伯が口にする。そして近くのファミレスへ向かった。佐伯は、そろそろ僕が来るんじゃないかと思っていたそうだ。妙に落ち着いていたのはそのせいか。
ファミレスではコーヒーを注文し、早速本題に入った。
「僕の妻へは、二度とちょっかいを出さないで欲しい。桜子へは『不倫をしているのなら辞めるように』と話しているが何も進展しない。延々と平行線をたどるだけで、解決どころか、このままでは桜子を追いつめるだけになってしまう」
佐伯は終始、目を伏せながら黙って僕の話を聞いていた。
「佐伯さんは、僕の妻と不倫をしていますよね」
顔は見えにくいが、うつむいたまま小さくうなずいた。
「妻との不倫関係を辞めてください。佐伯さんは、奥さんも子供さんもいるじゃないですか。それで自分の家族を守れるのですか。そんな中途半端な考えで、結婚している他の女性と不倫をするというのは、どういう了見ですか。それだけの覚悟や甲斐性はあるんでしょうか。こんなことをしているより、自分の家族を大切にしてください。どうかお願いします」
僕は、立て続けにそうお願いした。
穏やかに話し合いは終了。不倫を終わらせ、別れると約束
僕は一度も、声を荒げたり、怒ったりしなかった。
「全てわかっているけど、妻との不倫を辞めて欲しい。そうすれば事は荒立てない」と、お願いしました。
最後、ファミレスを出て別れる際、佐伯は深々と頭を下げてくれた。
終わった……
これで終わった。グチャグチャの泥沼になるより、判ってくれるのが最も良い。夫婦は永遠に円満ではなく、一度くらいは波乱もあるだろう。それが今だったんだ。よし、これから桜子との関係修復を頑張るぞ! これからが再構築だ。
佐伯も話がわかる奴でよかった。
とにかく直接対決はすんだ。時間は約30分。
隠し持っていたボイスレコーダーの録音時間に、そう記されていた。
(次回へ続く)→ 不倫相手を排除するも、妻から「実家へ戻りたい」と別居の申し出。
第3章・不倫相手との話し合い(17)
2005年2月