妻の不倫相手との話を終え、穏やかな気持ちで帰宅した僕に待っていたのは、妻からの「別居したい、実家に戻りたい」という言葉だった。
不倫相手との話し合いの翌日。妻は別居を希望、なぜ?
再構築、初日。
空気は依然悪いままだ。
不倫へ導いてしまったのは、僕にも原因があるもかも知れない。
円満な結婚生活に、あぐらをかいていたのかも知れない。
妻へは優しくしよう。
今回の一件、初期の頃は妻の意味不明な態度(不機嫌な体調不良)が理解できずに怒ったこともあったが、やり直しを覚悟してからは優しく接している。妻からすれば、激しい喧嘩を願っているかも知れない。それが離婚への拍車となるからだ。
重い日が続いた。
バレンタインデーも過ぎ去り、寒い冬の日々が続く。
妻は最近、僕への警戒心からか、風呂場の脱衣場まで携帯電話を持って行くようになった。
しかし不倫相手の佐伯と話し合って2週間ほど経った頃、妻の携帯に触れられる機会があった。触れなくても良いのだが、触れる事ができるチャンスだ。
覚悟して携帯を開いた。パスワードは以前と変わっていない。
無責任な不倫男、妻が別居したがる理由は奴からのメールだった!
オレに会ったらまたこっちに来るわ。ってか、もうこれ以上舐めた真似するなと最後通告だって。オレは桜子を待ってるけど、今会うのは危険だね。
桜子がオレを必要としてくれる間は、オレはどこにも行かないよ。しばらく会わないでオレのこと忘れたら、それはそんなもんやと思うし。親にも話したんだから、自分のやりたいようにがんばって。
……は?
好きかどうかは人任せ?
やっぱり中途半端な覚悟じゃねぇか! 責任逃れの偽善既婚者め!
まず両親が味方になってくれるよう、うまく話してね。浮気だけど真面目なことを分かってもらえるようにね。
馬鹿か。
やっぱり馬鹿だ。
なぜ両親に「まじめに浮気をしている」と伝えないと行けないのだ。もしお前に本気の覚悟があるなら、お前が桜子の両親に謝罪とお願いあがるべきだろ!
ご両親は急な状況の変化にすぐは対応できないと思う。焦らずゆっくりと話そう。心から桜子が笑ってる顔が見たいはずだから。二人とも。
何、メルヘンチックになってんだ!?
このサイコパス野郎!
じゃあ、そのオカルト屋敷から逃げないとね。手元にお前を置いておきたいだけのバカだ。離婚届と桜子に似た顔のダッチワイフ置いて、早くそんな所出ていけ。異臭がうつるぞ。
あの話し合いで、神妙に頭を下げていたのは一体なんだったんだ。
佐伯め……。
今日来ても話すこと無いじゃん。お前が死んだらって感じやわ。裁判って人生がめちゃめちゃにならないためにあるんですけど。相手しなくていいよ。別居から破綻のコースで。
実はこの直前、「このまま不倫が終わらないんだったら、オレは佐伯ともう一度話し、そして奴を訴える」と妻に伝えた。裁判をはき違えてる。被害者はオレだ。
お前は加害者で裁かれる側なんだ!
何故、こいつの頭はこんなにもメルヘンボケなんだろう。これでよく一流企業の正社員になれたもんだ。
そして、佐伯は桜子に別居を勧めている。やっぱりこいつの考えだったのか。
佐伯への怒りが再燃してきた。
数日後、桜子のSNSを覗いてみた。
そこに書かれていたのは……。
(次回へ続く)→ 他に好きな人がいます。妻がSNSでW不倫の悩みを相談
第3章・不倫相手との話し合い(19)
2005年2月