家庭内別居が限界に
妻から、「別居したい」と言われた。
別居……か。
有責者の妻からは離婚が出来ない。離婚は僕が承諾しないと進まない。そんな中での最大限の選択だったのだろう。
これまで再構築を考えて立ち向かって来たけど、もう無理なのかもしれない。
最初に妻の様子がおかしくなってから、もうすぐ2年。その間ずっと、精一杯、精一杯、やってきた。いまにも崩れ去りそうな、砂を固めてできた塀の上をギリギリの精神状態で歩み続け、遂にはお互いの足元が限界に来ているようだ。
夫婦の再構築を心に誓い、不倫相手を徹底的に排除し、妻の目が覚めるのを何日も、何週間も、何ヶ月も見守って来た。
2年間の緊迫が弾け飛びそうだ。嗚咽が込み上げて来る。
桜子と別居したら、もう一緒に暮らす事は恐らくないだろう。
もしかしたら、二度と会う事がないかもしれない。
僕はゆっくりと口を開いた。
「わかった。別居しよう」
辛い決断だったが、これ以上引き延ばしてもお互いが疲弊するだけだ。
もうここいらが潮時か。
数日後、桜子の引越の日が決まった。平日だ。
その朝、僕はいつも通り会社に出勤した。出掛けに「引っ越し、怪我するなよ」と言い残して。
日中、今ごろ引越屋さんが来て、荷物を出しているのだろうか。
そう考えると、胸が苦しい。
そして、
夜、
家へ帰ったら、
桜子の気配や消え去った部屋が、寂しく残されていた。
(次回へ続く)→ 妻がいない部屋で、ひとり暮らしがはじまる
第5章・やる直せるか?それとも離婚か?(32)
2006年4月