もう二度と会うことはないかもしれない……。僕は妻の「別居をしたい」の言葉を受け入れた。
妻が出て行った、寂しい部屋
僕は、3LDKのマンションに一人暮らしとなった。
夜、仕事を終えて、帰宅した部屋は暗い。
玄関の靴はまばらで、僕の分だけが並ぶ。ガランとした冷ややかな空間。
自分の都合で出て行くのだから、辛うじて家財道具は残してもらった。洋服、靴、化粧品、本やCD……、一人分がごっそり抜けた部屋からは、寂しさが伝わって来る。これが現実。受け止めるのに、しばらくの時間を要した。
とにかく今日からは別居生活。
新たな一歩を踏み出す最初の日だ。
これまで徹底的な不倫排除に翻弄し、根気よく、少しずつ、妻の目が覚めるのを待ち、再構築の可能性にかけてきた。
このままでは、99%離婚する事になるだろう。だが、まだ1%の想いに惹かれている。少し前まで精神崩壊寸前まで狂っていたのだ。気持ちのスイッチは、焦らなくても良いだろう。
また異動辞令。ずぶずぶと泥沼に堕ちて行く……
さて、そんな最中だが、職場でまた新たな辞令を受けた。
5ヶ月前に異動になったばかりなのに、また配置換えだ。今回は会社の経営方針によるもので、僕が失態を犯した訳ではない。
もう見飽きたよ……と思いながら、壁に貼られた自分の名前が書かれた紙を眺めた。
さらなる異動により、仕事内容はこれまでよりハードになる。勤務時間の基本が12時間。通勤時間や、仕事前後の時間を考えると、起きている時間は仕事のみといった生活スタイルになる。サラリーマンは基本的に辞令には逆らえない。哀れな存在だ。
公私ともに、新たな環境がはじまった。
ずぶずぶと底なし沼にはまって行く気分だ。
俺はどこまで堕ちるんだ。
失ってばかりだ。
自分の希望なんて、何一つ叶わない。
もう駄目なのか……。
いや、絶対に活路を見いださなくては行けない。このまま落ちぶれる訳には行かないんだ。なんとか好転のチャンスを模索した。
まだまだ、もがき続けるしか、僕に残された道はない。
(次回へ続く)→ 不倫問題終結を決意。まずは不倫相手への慰謝料請求から
第6章・新たな人生へ向けて(33)
2006年5月