不倫(不貞行為)とは、配偶者以外の異性と性的行為を持つことです。
これは長期間に渡る関係であっても、一夜限り、ナンパ、風俗であっても同じです。
不貞行為は、民法第770条の第一項に「配偶者に不貞な行為があったとき」とあり、離婚事由になります。また、民法第709条に基づき損害賠償の対象にもなります。
しかし、相手が異性以外であればどうなるのか。
- 妻が、他の女性と不貞行為
- 夫が、他の男性と不貞行為
実はこれまで、既婚者の同性不倫について裁判で争われた例は過去にない、と言われています。ですので「わからない」と答えざるを得なかったのです。
そんななか「同性との不倫も不貞行為にあたる」とした判決が、2021年3月16日に裁判所でくだされました。
同性同士の性的行為も、不貞行為
これまでは、婚姻関係にある男女の一方が同性と不倫をしても、法律上の不貞行為には該当しないとの見解が法律家の間で有力だった。原告代理人によると、同性同士の不倫を不貞行為と認めた司法判断は珍しい。
妻が同性愛に関心 女性との性行為は認めない
夫婦は、男女のカップル。
男性と女性のご夫婦です。
夫(30代)は、妻が同性愛に関心があることを理解し、女性と親しくつきあうこと自体は受け入れていました。しかし、性的行為までは許容していません。
夫が、妻と不倫相手(女性)を提訴
令和元年(2019年)、夫は「妻」と「妻の不倫相手(女性)」を提訴。裁判所へ訴え出ました。
一方の女性側は、同性同士の性行為は不貞行為に当たらない、と反論。
そしていよいよ、裁判所での判決がでました。
同性との不倫も、不貞行為である
東京地方裁判所は、原告である夫の訴えを支持。
「同性同士の不貞行為により、夫婦生活が離婚の危機にさらされたり、形骸化したりする事態が想定される」「婚姻生活の平和を害するような性的行為は、同性間であっても不貞行為の対象になる」と指摘したのです。
第一審は勝訴判決! しかし賠償額が不十分として控訴
裁判で勝訴した夫ですが、賠償額に関しては不服。
控訴し、二審へと進むこととなりました。
ここまで読んで「裁判に勝って不貞行為だと認められたんだから、もう良いんじゃないの?」と思った方もいるでしょう。賠償額(不倫の慰謝料)の関して、ニュース記事には記載がありませんでしたが、相当安かったのだと思います。
相場は、いくらくらいだと思いますか?
実は「裁判まで行くと、平均的に女性からは75万円くらい、男性は高くて200万円くらいの慰謝料しかとれない」と言われています。
夫婦生活をめちゃくちゃにされて、長期間苦しみ抜いて、弁護士に依頼し、裁判まで起こしたにもかかわらず、100万円前後だと納得いかないでしょう。しかも、離婚しない場合、その賠償額はさらに下がります。もしかしたら、50万円以下だった可能性もあるでしょう。
安い……
何の代償にもなっていない。
不倫の慰謝料については、婚姻期間、悪質性、離婚をする・しないなどによって金額が変わります。ただし、双方の話し合いで決着をつける(和解する)場合は、金額に相場や上限はありません。
勝訴を勝ち取ったのは、平成生まれの島田栄作弁護士
ちなみに、この裁判で原告の代理人として戦ったのは、葛西臨海ドリーム法律事務所(東京都江戸川区)の島田栄作弁護士。公式サイトに掲載のプロフィールは以下のとおり。
- 1989年(平成元年)生まれ
- 2015年3月 上智大学法科大学院卒
- 2017年 司法試験合格(司法修習・70期)
弁護士の島田栄作さんは、現在31〜32歳。
裁判が始まったのは2〜3年前ですので、当時はまだ20代だったということです。しかも司法試験合格の1〜2年後。
お若いにもかかわらず、素晴らしい実力ですね! 《不貞行為は男女間のもの》という、これまでの認識をくつがえしました。
注力分野は「離婚・男女問題」とのことです。
関連記事「同性婚」「同性不倫」について
記事執筆時点では、同性婚はまだ認められていません。
しかし最近、「同性カップルを事実婚(内縁)と認める判決」がありました。同性パートナーの一方が同性不倫をし、裁判所が不倫をしたパートナーに対して損害賠償の支払いを命じました(110万円)。
同性婚に対する機運が高まっていますね。数年後には、結婚・不倫の性差が無くなっているかもしれません。