婚姻関係にある者が不倫(不貞行為)をすると、裁判で離婚が認められたり、損害賠償(慰謝料)請求をすることができます。
では、同性カップルの間に不倫があった場合、慰謝料は認められるのでしょうか? 日本では、法律上同性婚は認められていませんが、昨今同性パートナーに対する機運が高まってきています。そんな関係において、不倫はどうなるでしょうか。
先日、それを巡った裁判が行われました。
裁判所は一審・二審ともに、同性カップルを事実婚(内縁)と認める判決を下したのです。
今回は、その裁判について、わかりやすくお伝えします。
【女性カップル】交際から結婚、そして不倫への経緯
- 2009年 交際開始(女性カップル)
- 2010年 同棲
日本人女性二人が恋に落ち、恋人関係となりました。その後、ふたりは同棲をはじめました。
- 2014年 アメリカで結婚
- 帰国後、日本でも結婚式を開く
ふたりは、同性婚が認められているアメリカへ渡り結婚し、結婚証明書を取得しました。そして帰国。日本では結婚式を挙げ、周囲にも事実上の同性婚であることを明らかしたのです。
さらに二人は、SNSで知り合った男性から精子提供を受け、子どもをもうけたいと考えました。その際、子育て生活を迎えるにあたって、マンション購入も計画。
ここまでは順調だったのですが……。
- 2016年 不貞行為
- 2017年 別居
精子提供者である男性と、一方の女性が不倫関係になってしまったのです。男性と女性は、不貞行為(セックス)をしました。
事実上の同性婚だったふたりは、別居することになりました。
↓
そして、損害賠償(慰謝料)を求めて裁判へ!
【裁判・第一審】不倫の慰謝料を支払うよう判決、事実婚(内縁)に準ずる
- 2019年9月 損害賠償(不倫の慰謝料)が認められる判決
事実婚であった二人のあいだに起きた不倫問題。
不倫をされた側の女性は、不貞行為をきっかけに関係が破綻したとして、元パートナーの女性に約630万円の損害賠償を求める裁判を起こしました。
判決は、「同性であるが、事実婚(内縁)に準ずる関係である」と認定され、元パートナーの被告女性に慰謝料110万円を支払うよう命じました。
栃木県・宇都宮地裁真岡支部での判決です。裁判官は中畑洋輔氏。
ただ法律上、同性婚ができないため、男女間に認められる法的保護の利益とは違いがあるとして、慰謝料などは110万円とした。
同性の「事実婚」に法的保護 宇都宮地裁支部判決:日本経済新聞より引用
【裁判・第二審】東京高等裁判所の控訴審でも、不貞行為をした側に支払いを命じる判決
- 2020年3月 婚姻に準ずるとし、損害賠償110万円
第一審を不服とし、東京高等裁判所で控訴審が行われました。そこでも、第一審と同等の判決が下され、控訴が棄却されました。
再び、不倫をされた側の主張(損害賠償)が認められたことになります。
慰謝料の金額は求めていた金額より低くなったものの、同性カップルであっても事実婚(内縁)と同等だと判断されたのです。
最高裁判例は男女の内縁関係について「婚姻に準ずる」と位置づけ、不当に破棄されれば賠償を求められるとしている。一、二審判決とも、同性カップルに同様の法的保護を認めた。
同性カップル事実婚、賠償額も異性婚と差なし 高裁判決:朝日新聞デジタルより引用
ここまでが、同性婚カップルに起きた不倫の顛末です。
後半は、少し掘り下げて解説します。
【1】裁判所が、同性カップルの法的保護を認めた!
この裁判が注目される、最も大きな理由は「同性カップル(事実上の同性婚)」だということです。
日本の憲法や法律では、婚姻関係は異性のあいだで結ばれるものとされています。憲法にも「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」という文言があります。
そのため今回の裁判で、「どう判決がくだされるのか?」が、注目されていたわけです。
先の朝日新聞デジタルの記事では、「高裁でも同性カップルの法的保護が認められた意義は大きい」と語った白木麗弥弁護士のコメントが掲載されていました。原告女性も「実態は異性婚と変わらなかったので、主張が認められてほっとしている」と語っていると、のことです。
婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。
【2】慰謝料は、裁判を起こすと安くなる
「不倫の慰謝料は、裁判を起こすより、示談した方が多く取れる」と、よく言われています。
以前、「裁判まで行くと、平均的に女性からは75万円くらい、男性は高くて200万円くらいの慰謝料しかとれない」という話も聞きました。離婚をする・しないや、財産分与の話になれば、裁判も有効ですが、不倫の慰謝料のために裁判へ挑むのと逆に安くなりがち、とのことです。
ちなみに示談であれば、いくらでも構いません。それで相手が支払うと承諾するのであれば。
今回の同性カップルの裁判。
裁判所が示した慰謝料(損害賠償)は、たったの110万円です。
精神的な苦痛を味わい、
2度も裁判をし、
それで110万円。
生涯を約束しあったパートナーに不倫をされるというのは、本当に何もかも消耗しますね。
また本裁判において、原告らは事実婚(内縁)に準ずるということで、婚姻に比べて損害賠償額は多少低くなっているとも考えられます。
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