探偵と興信所には、明確な違いがある
探偵(たんてい)と興信所(こうしんじょ)は、単に呼び方が違うだけではありません。
実は明確な違いがあり、探偵業・探偵社を営むには以下の2つを守る義務があります。
- 探偵をはじめるには公安委員会への届け出が必要
- 業務内容は探偵業法という法律で定められている
逆に言うと、興信所は一般企業と同等の扱いで、公安委員会への届け出は不要で、特別な法律もありません。
公安委員会への届け出とは
もし、あなが探偵へ探査を依頼しようと考えているのであれば、必ず「公安委員会へ届け出している探偵社であるかどうか」を確認してください。公安委員会への届け出が無ければモグリです。ご注意ください。
また、あなたが探偵業・探偵社を営みたい場合は、業務を開始する前日までに公安委員会(警察署経由)に届け出をしないといけません。
届け出する際、必要な書類と手数料
- 探偵業開始届出書
- 手数料 3,600円
- 添付書類
添付書類 個人の場合
- 履歴書
- 住民票の写し
- 誓約書(法第3条第1号から第5号に該当しないことを誓約する書面)
- 登記されていないことの証明書(法務局発行)
- 身分証明書(市区町村発行)
添付書類 法人の場合
- 定款の謄本
- 登記事項証明書(法務局発行)
- すべての役員に係る次の書類
・履歴書
・住民票の写し
・登記されていないことの証明書(法務局発行)
・身分証明書(市区町村発行)
・誓約書(法第3条第1号から第4号に該当しないことを誓約する書面)
探偵業法とは
かつて、探偵に関する法律はありませんでした。しかし、探偵業界が拡大するにつれトラブルも増えて行きました。
そんな中、平成19年(2007年)6月1日に探偵業法が施行。違反者には、罰則規定も設けられました(1年以下の懲役、100万円以下の罰金など)。探偵業法の範疇を超える違法行為があった場合は、当然そちらでも処罰されます。
探偵の定義
第二条
この法律において「探偵業務」とは、他人の依頼を受けて、特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務をいう。
ちなみに、探偵業法の正式名称は「探偵業の業務の適正化に関する法律」です。
探偵は、バレないよう密かに調査する
また、探偵と興信所の違いは、スタンスや業務内容にもあります。
探偵のルーツは、1895年(明治28年)に創業した「岩井三郎事務所」。日本で初めてできた探偵事務所です。岩井三郎氏は、元警察庁警察官で、退職後、私立探偵業として岩井三郎事務所を開業しました。
元警察官ですので、尾行や張り込み、また聞き込みなどのスキルを活かした、調査を行いました。これが現代にも引き継がれていて、先の「探偵業法」でも探偵が定義されています。
要は、調査対象者に気づかれないよう、密かに調査するのが探偵です。
映画、ドラマ、アニメなどでは、華々しく探偵が描かれていますが、バレないように遂行するのが探偵ですので、実際の見た目や行動はとても地味なものになります。なぜなら、目立つ格好をして張り込みなんてしていたら周囲からも怪しまれます。風景に馴染むくらい、地味である必要があるのです。
興信所は、名乗って堂々と調査する
もう一方の興信所は、警察ではなく銀行などの金融業がルーツです。
日本で最初の興信所は、1892(明治25)年、日本銀行の理事であった外山修三氏が設立した「商業興信所」です。また、1896(明治29)年には第一銀行の頭取であった渋沢栄一氏が「東京興信所」を設立しました。渋沢栄一氏は、2024年より新1万円札の紙幣の顔となる人物です。
なぜ、金融業界で調査が必要なのか?
興信所の調査は、事件を解決に導いたり、不倫などの身辺調査が目的ではありません。ビジネスにおいて相手企業の与信などの調査が目的なのです。帝国データバンクも、元の社名は帝国興信所です。
調査対象者に「私は〇〇興信所の者です」「〇〇データバンクから来ました」と、堂々と名乗って相手から情報を得るのが興信所です。
バレないように調査する探偵とはスタンスが全く違います。
探偵の守秘義務は、法律で定められている
補足として、探偵には守秘義務が「探偵業法」で定められているのを付け加えておきます。
業務上知り得た秘密を、正当な理由がなく他人に漏らしてはいけないのです。また、これは探偵を辞めたあとであっても同じです。
探偵業法(秘密の保持等)
第十条 探偵業者の業務に従事する者は、正当な理由がなく、その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。探偵業者の業務に従事する者でなくなった後においても、同様とする。
2 探偵業者は、探偵業務に関して作成し、又は取得した文書、写真その他の資料(電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。)を含む。)について、その不正又は不当な利用を防止するため必要な措置をとらなければならない。
不倫調査を依頼するのは、探偵と興信所どっち?
最後に、不倫をされた側が利用するのは、探偵と興信所のどっち? という話題で締めくくります。
不倫調査を依頼するのは、探偵です。
ただし現実は、興信所も不倫調査を行うことがあります。
興信所は、与信などを調べるなかで身元調査も得意としていますので、興信所によっては顧客からの依頼により不倫調査を行うこともあるのです。
ただしその場合、公安委員会への届け出をしているのかどうかを確認してください。公安委員会への届けがないと、探偵業務は行えないからです。また、不倫調査を得意とする調査員がいるかどうか、これまでの実績はどうか、過去に行政処分を受けていないかどうか、なども合わせて確認すると良いでしょう。
特に、強いこだわりが無いのであれば、不倫調査は興信所ではなく、探偵社へ依頼するのが良いでしょう。