職場の異動から3ヶ月。春がやってきた。
大好きだったおじいちゃんが、突然息を引き取った
冬が終わり、桜のつぼみが大きくなる季節。
僕のおじいちゃんが倒れた。風邪をこじさせたような感じだったが、入院させられる事に。親父から「危ないかもしれない」と告げられた。
え? ついこないだまで元気だったのに。
病院では、おじいちゃんがか細い声で声を掛けてくれた。
「ワシ、だめかもな」
そんな事いうなよ!
僕は、おばあちゃん、おじいちゃんっ子だ。去年はおばあちゃんが亡くなり、そして今、おじいちゃんが病院のベットに伏せている。おじいちゃんはみるみる衰弱し、親父が「今夜が山場になりそうだ」と。
そんな馬鹿な。2、3日まで話してたのに。
その夜、おじいちゃんは息をひきとった。お医者さんが死亡を確認した。
翌日、動かないおじいちゃんが帰宅した。明日、お通夜が行われる。喪主は親父だ。とにかく親父には「疲れも溜まってるだろうし、明日からもあるから、今日は寝ててくれ」と伝えた。
一晩、僕はおじいちゃんと過ごした。
布団に横たわったおじいちゃんの隣に、僕は座り、ずっとおじいちゃんを見ていた。
こういう時って、お線香を絶やしちゃダメなんだよな。
口から言葉には出さなかったけど、一晩中おじいちゃんとずっと話した。
去年はおばあちゃんが亡くなって、すごく落ち込んでたよな。なんか良く喧嘩してたけど、結局おじいちゃんは、おばあちゃんの事好きだったんだな。おじいちゃんは戦争にも行ったけど、その後は子供や自分たち孫に恵まれ、なんだか楽しそうな毎日だったな。おじいちゃんの顔をあたまに浮かべると、笑っている顔しか出て来ないや。
なぁ、おじいちゃん。夫婦って大変だな。そんなに長くやって来れたなんて尊敬だよ。
それがあるから、今、僕はここに居るんだよな。
おじいちゃん、ほんとありがとう。ありがとう。ありがとう。
火葬場で嗚咽……。僕の目標が定まった
翌日、お通夜が営まれ、翌々日にはお葬式が行われた。
沢山の方が来てくれた。おじいちゃんは、親しかった人たくさん居るんだな。
おおかたの行事が終わり、次は火葬場へ向かう事になった。
おじいちゃんを乗せた霊柩車を先頭に、僕らはバスに乗り込んだ。
向かう途中、これまで全く泣かなかったのに、突然崩壊した。涙が止まらない。沢山の人がいるのに、嗚咽するほどに号泣してしまっている。止められない。
___火葬場に続く道には、桜が咲いていた。満開だった。
桜子も一緒に座っていて、おとなしく神妙にしていた。
おばあちゃんが亡くなって、後を追うようにおじいちゃんがこの世を去った。
夫婦とはこういう事なのか。
おじいちゃんは幸せだっただろな、と思う。
僕はこの時に気がついた。
いくら真面目に生きたって、死んだらみんな同じ。
「あのじいちゃん、堅物だったねぇ〜」なんて言われながら、この世を去るより、「あのじいさん、ほんと好きなことばっかり。人生楽しかっただろね〜」と言われて去る方が幸せだ。
僕は、「面白可笑しく生きよう」。そんな人生の目標が定まった。
ありがとう、おじいちゃん。本当にありがとう。
天国でおばあちゃんと再会できますように。
(次回へ続く)→ 帰宅すると妻は荷物をまとめて出て行っていた
第5章・やる直せるか?それとも離婚か?(31)
2006年4月